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能管(のうかん)

能管の基礎知識ー能管の扱い方

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動画ファイル【能管の基礎知識ー能管の扱い方】の補足解説

能管(のうかん)

※道具の起き方、所作や扱い方は流派(森田流、一噌流、藤田流)により若干異なります。動画は、森田流笛方の作法です。

演奏前の準備、演奏後の手入れ

能管(のうかん) 能管(のうかん)

乾燥を嫌う笛であるため、特に冬場は気を遣わなければならない。
演奏前も、いきなり音を出さず、暖かい息を十分に吹き込み、管に適度な湿気を加える。演奏が終わった後も、西欧フルートのように管内の湿りを布で入念に拭うようなクリーニングはしない。管尻から流れ落ちる水気を手拭い等で拭き取り、蜜蝋に水滴が溜まっている場合は、綿棒などを優しく添えて水分を吸わせる程度に留める。
適度な息の湿り気や、握った手の脂分などが能管のコンディションを整える役割を果たしているためである。中袋や和紙で包み、笛筒や箱に入れて保管する。

笛筒について

能管(のうかん) 能管(のうかん)

笛筒は文字通り能管を収める筒だが、舞台では演奏中も脇に差したままである。軽量で邪魔にならず、かつ丈夫であることが望まれた為であろう。いにしえの匠による笛筒は、一閑張り(写真右)と呼ばれる貼り重ねた和紙を漆塗りで仕上げた製法で作られている。

能管(のうかん)

本番では、能管をじかに笛筒に差し込む(写真左)が、普段の保管時は薄生地の中袋や和紙を挟んで仕舞う。

能管の基礎知識ー能管の音色

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動画ファイル【能管の基礎知識ー能管の音色】の補足解説

能管のなぞ~ノド(喉)~

能管(のうかん)

能管の響きは聞き手に独特の緊張感を与える。音の高低はあるものの、中音域は通常の音階よりも狭く、独自の音移(ねうつ)りを生み出している。器楽的な純粋音以外に吹き込む息の音が多層的に重なっているため、倍音が大きく増幅されていること。これらの要素が、鳴り始めた途端に能舞台の気配を一変させる稀有な笛の個性を形成している。

能管(のうかん)

この要素を作り上げている重要な部分が、能管の内部に仕込まれたノド(喉)と呼ばれる挿入管である。歌口と第一指孔の間(写真右)を切断し、別の竹材を挿入しているため、いわゆる息袋部分の内径が細くなっている。

この特殊な管内形状が、中音域の音程幅を狭め(同じ指孔の発音がオクターブに満たない)、倍音を増幅させている。唱歌(しょうが)の言葉に近いニュアンスをもっとも効果的に再現するのに適した特徴をもたらしているのだ。また、高音のヒシギには他の笛にはない類まれなる力強さが加わるのは、人間の可聴音域を超えた高周波(※)が鳴っているためであるが、それらも、このノドの挿入構造によるものであるらしい。

能管(のうかん) 能管(のうかん)

ノド誕生の発端は、雅楽で使われる“竜笛(写真右)”の製作や修理の際に発見した偶然の産物との巷説もあるが、未だ謎に包まれたままである。
能管と竜笛の差はノドの有無だけではなく、指孔間の寸法の差があり、その特徴は猿楽から能が確立される頃に製作されたと思われる最初期の能管にも当て嵌まる。能管が世に登場した早い段階から、ブサシ(=物差し・笛を作る際に元となるメジャーのような笛)が竜笛とは異なっていた証しである。
つまり、能管は単に竜笛にノドを挿入しただけの笛ではなく、いにしえの笛師が、ノドという挿入管を施した「能のための笛」として製作したのではないかと推測する説もある。

神降ろしの笛

能管(のうかん)

能管は“神降ろしの笛”とも呼ばれるとおり、そのルーツは縄文時代の祭祀に使われた石笛(いわぶえ)にあるとも云われている。
能そのものが神や死者などこの世のものではない登場物が中心となる舞謡劇であり、それらを舞台に誘う働きとして能管のヒシギが吹き放たれる。まさに石笛の直系と云われる所以であるが、じつは音響特性にも共通点がある。石笛の鋭い高音には人間の可聴音域(20kHz)を超えた22kHz以上の高周波が確認されているが、能管のヒシギにも同程度の高周波が含まれているのだ。これらの不可聴音域は人間の耳には聞こえないが伝脳するため、高揚感やリラックスをもたらす。ただし、残念ながら通常のデジタル録音では20kHz以上はカットされてしまう。是非、能楽堂での生演奏を体感して戴きたい。

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